懸垂時事故が登攀中より多い為、懸垂の最初と最後は経験者が担当する事を鉄則としていたが厳守しなかった。

2006年
8月
性別 男性
年齢層 60歳代
登山形態 クライミング(外岩)

状況8月5日晴れ。前穂高北尾根の登攀をほぼ終了し、後は2峰の約10mの懸垂をすれば、ほんの少し歩けば前穂岳の山頂である。山頂から登山客が私達を見ているのが手にとるように見える。

私達のパーティは4名。北尾根経験者は2名名前はA及びB。後の二人は北尾根初経験、仮に名前をCとD.私達の経験で、懸垂の最初と最後は登攀経験のあるものが当たる、を鉄則としている。

懸垂支点のセットをAが行い、Cが補助をしていた。遅れてBとDの順で懸垂支点に到着。Aが懸垂を終了したので、BはCの懸垂についてアドバイスを行い、無事Cは終了。その後Bは何気なく、自分が懸垂をしているのに気が付いたが、既に懸垂を始めてしまっていたので、そのまま、懸垂を終了した。

最後に残されたDは懸垂姿勢のアドバイスを受けることも無く懸垂を始めた。Bはもし、万が一、と考えて、懸垂支点の終了点で、ロープを持ち、いつでも止められる態勢をとっていた。

教訓・反省 懸垂の事故が登攀のそれよりも多い事実を知っているために、懸垂の最初と最後は経験者がそれにあたる、を鉄則としていたが、それを守らなかった。

最後に残るBはDに対して適切なアドバイスを行い、無事に懸垂終了を確認してから、最後に懸垂すべきであった、と反省している。

もし、万が一、この場合、最後のDが何らかのミスで懸垂の失敗をしてしまったことを考えた場合は、Bの責任は重い。

 なぜ、Dを最後に残してしまったか。もう前穂の頂上は目の前、懸垂も10mで短い、、といった安易な考えがあったのかもしれない、また、狭い岩場でBとDが入れ替わるのは危ないのではないかとその時感じたのか、または安堵感で、緊張感がなくなったのかもしれない。が、ほんの何気なく、Bはに入ってしまった。

 今後は最後まで、安全地帯に入るまでは緊張感を持って登攀するように心掛けたい。大反省である。