四つの楽しみが味わえる鋸山新道

日時:2007年4月27日
記録:ふわくハイキングサークル


– 安兵衛井戸コースから車力道コースへ –

昨年、鋸山の登山口の金谷側から2本の新道が開削された。これによって金谷口から鋸山山頂をめざすルートは、変化に富み、しかも房総石を切り出した石工職人の苦労と汗の跡を直接自分の眼で確認できる「歴史を識ることの出来る登山道」となった。千葉労山の仲間に紹介したい。

この2本の新道を一周した場合、「四つの楽しみ」を味わえることが出来る。

  1. 沢沿いのせせらぎを聞く楽しみ
  2. 深い木立の下で両手両足をフルに使って登るアドベンチャーの楽しみ
  3. 東京湾の海風に吹かれて房総の山並みや富士・丹沢までを眺めることの楽しみ
  4. 石切現場と石材を降ろした跡の残る歴史を識る楽しみ

先ず新道の一つである安兵衛井戸コースに足を踏み入れよう。JR内房線金谷駅から線路沿いの登山道を進むと、JR線ガードの下をくぐる。

すぐ眼の前に小橋がかかるので、これを渡るのが安兵衛井戸コースの入り口だ。

すぐそばを流れる細々とした小川は金谷川の支流で、素堀のトンネルまでおおよそ1時間、せせらぎの戸のお付き合いとなる。

頭上の鋸山道を越えると本格的な山路となる。マテバシイの繁る樹下の沢は、陽が差し込まないせいか、両岸の岩場は緑の苔におおわれていて「緑の渓間」が美しい。

途中に二ヶ所程の小滝も落ちている。小橋からおおよそ1時間で、沢の水が涸れ始めると眼の前の尾根に素堀のトンネルが現れる。

トンネル内が曲がっているため、向こうの出口がよく見えず不安になる。ライトを付けて踏み込もう。

出たところが金谷川源流の安兵衛沢だ。50年ものの杉木立の中を左手の尾根を急登する。頭上の太陽光線が杉木立から洩れてきて「樹林のフィトンチッド」が感じられる。

東の肩から派生してきた尾根上に出ると固定ロープが張られていて、地元の方たちの「安全感」が実感出来る。ロープと木の根に助けられながら、ゆっくりと登る。

はるか右上に三角点のある山頂が望めるが、あせっては呼息がもたないので、アドベンチャーを楽しもう。

間伐材の階段が出て来たら、5分ほどで縦走路の”東の肩”に着く。南の保田側からの涼風が吹き抜ける箇所にベンチもあるので小休止にしよう。

ひと息ついたら三角点の山頂へ向かおう。右に房総の山並み、左に富山や伊予ヶ岳が眺められる山路をゆっくりたどると30分で三角点へ。

かつてこの路には「夏椿」が何本かあった、梅雨の前の美しい花を思い出す。

マテバシイの樹間に散在する巨岩には、イワタバコが芽吹いていた。説明板のある山頂を越えると、次のピークは千葉テレビのアンテナの建つコブだ。

アンテナの下で「ふれあいの路」に合流すると、車力道への下降点があり、20m先の展望台で大休止とする。

下山は車力道からの直登コースを降りることにする。昨年完工された直登新道はステンレスの手すりが両側に設置されていて安全だ。50m程の足下に見える石切場までほとんど垂直に落ちている。

このくらいの施設にしなければ「足がすくんで動けなくなる」箇所なので、慎重に行動したいところだ。

石切場跡には池があり、モリアオガエルの卵やオタマジャクシが群れていた。岩壁の途中に「安全祈願のための観音像」が刻み込まれている。

クマノミズキの大木の下で休むことも出来る。石切のノミの跡を眼で追い続け、足元の岩場に残る車力の轍(てつ)の跡を確認しつつ、房総石が大江戸の街を造る歴史に思いをめぐらしてみるのもなかなか興味深いものである。

(記 – ふわくHC鵜沢さん)


鋸山安兵衛井戸コース

4月27日(金)浜金谷駅を出発、鋸山観月台・車力道コースに向かうJRのガード下を潜ると真直ぐに入ると、安兵衛井戸のハイキングコースの入り口がある。

最初は、民家や別荘が沢の右左にあるが、それを過ぎると山道になる。静かな沢音やかじか蛙の鳴き声を聞きながら静かなシダ類の多い道を歩く。少し日の当たる所にヤマルリソウ・タツナミソウ・ツルカノカソウが咲いていた。

沢には、幾つかの小滝もある。約35分歩くと、手彫りのトンネルに行き着く。少し曲がっている為入り口は暗いが、5mも歩くと出口の光が見える。ライトで照らすと、横穴が7箇所もあり、炭の貯蔵場所に使用され、石切り職人や炭焼きの人、蒔き取りの帰りなどの休息場所に利用されたそうだ。5分ほど行くと安兵衛井戸がある。

安兵衛井戸の言われは、「昔、金谷の漁師町には、何本かの井戸がありましたが、海に近い為塩分の強い水でした、病に倒れた安兵衛の、母の願いは、美味しいお茶を飲みたいことでした、親孝行の安兵衛は、人伝えに聞いた、この清水の湧き出る溜まりまで、毎日往復2時間をかけて清水を汲み、美味しいお茶を母に飲ませたそうです」。

井戸と言うより、岩の隙間からの湧き水。ヒシャクが置いてあります。ペットボトルに汲み取りお茶を立ててみてはいかがでしょうか。井戸を過ぎると急登になる、かじや旅館の親父さん達、町の有志がルートを開発した道です、ロープや階段など大変な苦労をしたそうです。約40分で関東ふれあいの道の、ベンチのある東の肩に着いた。

(記 – ふわくHC中原さん)