亀山折木沢~黒滝~滝原

ちばの古道「廃村の加勢を越えて滝原に降りる路」を歩く

今秋、房総の紅葉の染め上がりは見事だった。養老渓谷と梅ヶ瀬はもとより、筒森の“もみじ谷”も七里川渓谷の吊り橋付近の彩りは絶品格だった。

十二月の初めに、ちばにこだわる「房総の風」グループと「県職労退職者会」のみなさんと二度にわたって七里川温泉をベースにして二つの渓に入った。

紅葉狩りの人が多すぎたことを除けば、カエデや山ハゼの紅色は“十年に一度”と言っても良い程の出来映えだった。

※歩行ルートおよび加勢林道は編集者が適当に描いたものです。実際のものとはかなり違いますので、その点ご了解ください。

そんなこともあって、ふわくの例会が折木沢から加勢を越えて滝原へ降りるコースがあったので、折木沢の黒滝近辺の“紅葉再び”と欲をかいて参加した。

亀山湖にかかる折木沢橋の正面右側の白い岩肌にからまる紅葉は少し盛りを過ぎた感があったが、相変わらずだった。黒滝手前のトンネルを抜け出たところは、頭上のカエデも対岸のそれも、黒光りする滝岩との対比で、参加者は声をあげていた。

今回のコースは黒滝手前に新しく作られた加勢林道に入り、工事が中断している処から今は廃村となってしまった加勢の民家跡を抜けて小仁田峠に至り、百年も前に使われていた滝原に降りる古道をたどってみる“古道好き”には、ゾクゾクする程の魅力あるコースだ。

さて、加勢へ登るコースは、これまで猪の川林道の黒滝より1.5キロほど先にある“新田”手前から左の尾根に取り付き尾根通しに加勢に至る道が一般的だったが、今回は加勢林道が新設されたのでこれを使ってみた。

亀山折木沢~黒滝~滝原急坂の上りはコンクリート舗装されていた。林道両側にはアブラ桐が林立しているので「アブラ桐街道って呼んでいいネ」との声あり。電灯のない昔は、この桐の実から灯油を採ったのでその名がある。実をひろってかじってみたら“ピーナッツ”のような味がした。これを煎ってみたら上等のツマミになると思う、新発見だ。

尾根に出た平らみで工事は中断。ここにあった“加勢の宮”にお参りをして、本格的な山路に踏み込む。左側にある小笹の生える山路は山の民の生活道路だ。すぐに御神木らしいクスノキもあり、炭焼きがまの跡もある。私が山歩きを始めた五十年ほど前には、土台石や墓石もあったことを思い出す。

五分ほど歩いた左手に最奥の民家跡を見ると、その先が小仁田へ抜ける峠跡だ。北方(左手)へ少しずつ下る古道は杉の枝や落ち葉で覆われているが、昔の道路跡と判別できる。右手の谷は小仁田との境にある土沢だから入らぬ注意が必要。

初めて歩いたときは植林直後だったから石尊山や大福山まで見渡せた。今、古道を覆い隠す杉やヒノキは立派な建築用材として育っていて、歴史を実感できた。

古路の先に亀山湖がチラチラ見え始めると終点は間近。湖面に向かって急な坂を慎重に降りると、人が一人やっと通れる狭い鉄橋がある。

滝尾橋の先が滝原親水公園で、水洗トイレと東屋が完備されている。亀山湖の終点と小櫃川沿いに遊歩道があり、せせらぎと水鳥に逢える。

公園上の古い神社は、日本武尊と阿久留王との闘いにまつわる亀山神社で、房総の古代史も学べるので寄ってみよう。

アクセス: 
JR上総亀山駅から長崎、滝原から上総亀山駅にはバス便あり。乗車時間はそれぞれ4分、7分。歩いても30分、45分。バスは君津市が運行するコミュニティバス(0439-56-1206)。  

コースタイム: 
長崎十字路-(0:10)-折木沢橋 -(0:10) - 猪峰橋 - (0:10) - 加勢林道入口 - (0:10) - 黒滝 - (0:10) - 加勢林道入口 - (0:20) - 林道終点 - (0:05) - 加勢民家集落跡 - (0:10) - 小仁田峠 - (0:40) - 滝尻橋 - (0:05) - 親水公園 - (0:05) - 亀山神社 - (0:10) - 滝原バス停

(記 – ふわくHC鵜沢さん)